【レポート】カチコミ8月烏丸企画「登場人物と暮らす 〜上京編/望郷編〜」

こんにちは、花まる学習会王子小劇場の伊坂です。
カチコミ8月烏丸企画『登場人物と暮らす ~上京編/望郷編~』が8月24日(土)の11:30~15:30と16:30~20:30の2回にわたって開催されました。


講師は辻本直樹さん(関係舎/Nichecraft)。エチュードのワークショップですが、辻本さんは普段は演出家ではなく、小道具・製本・記事執筆など小劇場で多岐にわたって活躍されています。『登場人物と暮らす』は辻本さんが代表を務める関係舎で行っている『架空のプレ稽古』の“カチコミ”出張版です。

上演を前提としない演劇ユニット・関係舎 公式サイト
小劇場の"イレギュラー系"小道具製作チーム・Nichecraft 公式サイト


そしてアシスタントとしてさいとう篤史さん(ジョナサンズ)と二ツ森恵美さん(時々、かたつむり)に両回ご参加いただきました。アシスタントは辻本さんが開催する同様のワークショップへの参加経験があることを除いては、参加者と同じ立場です。(ちなみにお二方同士も初対面でした。)

このワークショップ『登場人物と暮らす』の大きな特徴として、以下のようなことが挙げられます。

①舞台上に立つ意識が不要である。
タイトルにも表れている通り、舞台上の意識を持たず「登場人物として普通の生活を送る」ことを目的としています。俳優さんの役の作り方にも色々ありますが、普段と変わらない自分と向き合うことで発見があるのがこのエチュードの面白いところだと思います。「言葉が(観ている)こちらに聞こえなくてもよい」というのもなかなか新鮮です。

②エチュードが始まったら約8~10分程度止めない。
展開や状況によってはもう少し短くても中断する場合があると断られていましたが、実際にこの程度の時間で1シーンずつ進んでいきました。少人数でのワークショップのエチュードとしては結構長いと思いますが、「面白いこと」「無理をすること」が求められていないので、実にスムーズに進んでいきます。

③演出家がいない。
辻本さんはこのワークショップにおいては主に進行役であり、いわゆる“演出”をするわけではありません。一回のエチュードが終わると、全員で起こったことなどを整理する時間(フィードバック、と呼びます)を取って、エチュードの中で出た発言や行動を確認します。シーンの中で生まれた情報は大事にしてディスカッションで共通認識を作り上げていきます。フィードバックが終わったら、すぐ次のシーンのエチュードに移ります。なので「こうしなければならない」はありませんし、「何をしていいかわからない」ということも起こりません。

そして見学した私が感じた最大の特徴は、前回開催時のレポートにも書きましたが、これです。

④できあがったシーンとその過程に演劇的面白さがあふれている。
講師の辻本さんによって(おそらく綿密に)準備されたタイトル・設定・配役などが異なるので、また演じる参加者の個性が強く表れるので毎回違うことが起こるのはもちろんですが、誰かが強く誘導することもないので、それがかえって誰も予想していなかったであろう動きを物語に与えていて目が離せないのです。
今回もまさしく良質な短編をマチネ・ソワレと2本観たような充実感がありました。

前置きが長くなってしまいましたが、ここから写真とともに振り返っていきましょう。
今回はそれぞれ上京編/望郷編として2回に分けて開催されました。それぞれに設定と、各参加者の役が与えられて1つの物語が作られていきます。

 

上京編のタイトルは『新緑二丁目13の3(仮)』、上京して引っ越したアパートで隣同士になった2人とその周囲の人々との交流の物語です。テーマは「新しい環境を満喫する」。


望郷編のタイトルは『駐輪坂のサバトラ(仮)』、半年前に廃校になりまもなく取り壊される中学校に忍び込む卒業生たちの物語です。テーマは「架空の思い出を共有する」。

各回ともにまずはウォーミングアップの自己紹介とリズムゲーム(これらもトリッキーで面白かったです)、それから本編であるエチュードの目的や流れについて辻本さんから丁寧に説明が行われました。参加者の皆さんも興味深く耳を傾けます。


たとえば、禁止3か条というのがあるのですが、

1. 観客を意識しない
2. 大事件を持ち込まない
3. 思い出を忘れない ※思い出とは、要するに前述の「共通認識」を指します。

と、非常にシンプルで明確です。演出家や俳優が特別なことをしなくても面白いのは、こうやってきちんと共通認識を作るところに秘密がありそうです。
各演目で与えられる設定も実にシンプルで、『新緑二丁目13の3(仮)』では「時期は5月~10月ごろまで」「駅から徒歩約8分程度、家賃58,000円(共益費込)のワンルーム」など、『駐輪坂のサバトラ(仮)』では「電車の最寄り駅から学校までは路線バスで10~15分くらい(自転車通学が主流だった)」「駐輪場までショートカットできる道(通称・駐輪坂)の途中にいつも肥った野良猫がいた(今はいない)」などといった各5行程度のみです。
配役も同様に一人1行で、「音楽活動のために両親を説得し、GW中に上京。アパートの壁が薄いので自宅で練習ができずにいる。」「高校を卒業してすぐ地元の花火メーカーに就職した。」といった具合です。
必要な情報が一枚の紙に整理されていること、項目は決して多くないものの少しだけ具体的なことがミソなんでしょう。実際にエチュードが始まるとこの一言一句がとても有効なものであることに気付かされます。
ここにその作品内でのどのようなシーンかと、そのシーンに誰が登場するかについて辻本さんから指定があり、エチュードとフィードバックを繰り返していきます。



望郷編ではなんと、担当職員の烏丸棗も参戦。
※烏丸さんは牡丹茶房の主宰・脚本演出家です。近年は舞台には立っていません。




よく知っている烏丸さんも、だんだんとその役の人物そのものに見えてきます。
役名は付いていないので演技中も本名で呼び合うのですが、それぞれの呼び方が自然になっていって、あだ名が付いて自然に定着していく様子も興味深かったです。
そんな中で次第に感情が動かされたのも、私だけではないと思います。小さい部屋の中のワークショップでありながら、気が付けばすっかり作品としてのめりこんでしまいました。


今回は5シーン程度を、最後に頭からもう一度同じ流れで通して各回終了しました。
どのシーンも1回目と比べて明らかに密度が高まっていたのは、単に慣れたからというより、フィードバックの蓄積によって「登場人物」としての立ち居振る舞いが次々と生まれたことによるものだったと思います。

……と、ここまでいろいろと書きましたが、(そしてこれはどんなワークショップでもそうなのですが、)やはりこの魅力はレポートだけではお伝えしきれません。

⑤誰にでも参加しやすい。
これが最後にぜひともお伝えしたい『登場人物と暮らす』の魅力です。
やることが明確で、とても平和なワークショップです。技術は大きな問題ではありません。
参加者の皆さんもそうだったように、エチュードが得意だという人はあまり多くないと思いますが、全員で積極的に楽しんでエチュードができる機会というのは貴重ではないかと思います。
今回参加していただいた皆さんも、演技中に自由になれる感覚、舞台上でももっと自由になれる感触をつかんでお帰りいただけたのではないかと観ていて感じました。
俳優を目指そうと考えている方、さらに演技・演出に少しでも興味がある方には広くお勧めしたい、そんなワークショップでした。

そしてもう一つ、お知らせです。
今回の講師を務めていただいた辻本直樹さんによる関係舎『架空のプレ稽古』11月3日(日)・4日(月)の2日間にわたって開催されます。
この記事を読んで気になった方はぜひチェックしてみてください!

関係舎 架空のプレ稽古2019 part2


以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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